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この世で最も美しいもの

この世で最も美しいもの

お上人に「この世界で最も美しいものは何か?」と尋ねられたことがあります。私は一時考え込んだ末、「日の出」と答えましたが、お上人は静かに目を閉じて首を横に振りました。

私は、またまた考えこんで、「宇宙」と答えました。
お上人は、おちょこのお酒を飲み干すと、テーブルの上に置き、また静かに首を横に振りました。

徳利のお酒を、空いたおちょこに注ぎ、その時考えられるものを、次々と答えました。

お上人は、私のひとつひとつの答えに、首を横に振ります。
そして、おちょこを一杯 グィっと飲み干し、テーブルにおきました。

私は、またお猪口にお酒をつぐと、正座してお上人の回答をまっていました。お上人もお猪口をじっと見つめています。

私も、また考えはじめました。しばらくして、お上人がお猪口を手にし口に運ぼうとしていました。
その時、私は「自分が、まだ見たことがないもの」と答えると、お上人はお猪口を口に運ぶ手を止めて、私の方をみました。

そして、「としぼう! 近い」と言って、グィッとお猪口のお酒を飲み欲してから、言いました。

「この世で、最も美しいものは目で見えない」

なんだ? それじゃ美しいかどうか、わからないだろと、当時こどもだった私は、思ってしまいました。
そして、お上人との問答で理解できないものが多々ありました。
「この世で、最も美しいものは目に見えない」も、そのひとつです。

今になって思えばそれは、星の王子さまの本「本当に大切なものは目に見えない」と同じで、内面の価値や目に見えない絆、愛情など、形では捉えられないものの大切さを、当時教えて頂いたのかと。そして私の心に撒かれた言葉の種が咲き始め、横浜こども食堂などの開設につながったのかと、思えてなりません。

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの小説『星の王子さま』に登場するこのセリフは、物語の中で狐が星の王子さまに語る重要な教えの一部として表されます。このフレーズは、

「On ne voit bien qu’avec le cœur. L’essentiel est invisible pour les yeux.」

というフランス語の原文を日本語に訳したもので、直訳すると「心でしかよく見えない。本質的なものは目に見えない」となります。

『星の王子さま』は、友情、愛、人間関係、そして人生の本質的な価値についての洞察を含んだ物語であり、このセリフは作品の中心的なテーマの一つを象徴しています。物語を通じて、サン=テグジュペリは読者に、外見や表面的なものに惑わされず、心で物事の真価を見極めることの重要性を伝えています。

本当の価値や美しさは外見ではなく、感じることのできる内面にあるというメッセージ。
それは感情や絆、人生の経験など、目に見えないものによってのみ真に理解され、感じられるものです。サン=テグジュペリは、この思想を通じて、物質的なものや外見だけに価値を見出すのではなく、人々がより深い精神的なつながりや内面的な美しさを重視するべきだと訴えていると感じてなりません。

「人生において最も価値あるもの」

人間関係における愛や信頼、道徳的な価値、精神性といったものは、しばしば目には見えない形で存在し、人生において最も価値あるものとされます。これらは感じることはできても、直接目で見たり手で触れたりすることはできない精神的なものや感情です。

冒頭、私のこども時代にお上人との問答で「この世で、最も美しいものは目に見えない」という教えは、物質的な価値や外見の美しさを超えた、人間の精神性や内面の豊かさ、そして人と人との間に存在する見えない絆や愛情を大切にするという事を、横浜こども食堂の基本哲学としています。

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