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第3回「どうにもとまらない」

    第3回「どうにもとまらない」―ひょんな事からパソコンが本業になる―

    檜原村で、羊を飼っている。とし坊です。檜原村では、マンクスロフタンという希少種の繁殖をしています。角が最大6本出るという事もあり、出荷先の動物園では、隠れた人気があったりします。マンクスはバイキングが航海に連れて行った羊といわれるレアな品種で、世界的に嫁入りや婿養子を迎えたいのですが、移動が禁止され、日本では絶滅危惧となりました。それをネットで知った方々から支援が集まり、ある獣医学部の協力を得たことで人工授精プロジェクトが始まります。  さて、話は昔に戻り、前回の続きです。 鉄工所で計算業務がこれほどあるとは知らず、日中の労働と計算機の連打が休みなく続く、ブラック企業な状態でした。 もうろうとする毎日に、何とか楽できないものかと思っていたとき、マイコンの存在を知り、導入することになりました。

    ところが、計算の自動化を進めるにはプログラムが必要で、さらにプログラミングまで勉強しなければならなくなり、「もうだめだ、会社を辞めるしかない」と何度も思いました。 しかし、試行錯誤しているある日、プログラムが動くようになったのです。すると、驚くことに、今まで睡眠時間を削っていた計算が、あっという間に終わるだけでなく、プリンターできれいに印刷された書類を見た人たちは、「町の鉄工所がコンピュータを使っている」と当時の鉄工・造船業界でも話題となったのです。  噂を聞いた大手電機メーカーや有名な上場企業さんが次々と、仕事の話を持ってきてくれるようになり、事務所を増設し社員も雇用して、プログラマー育成をはじめました。 さらには、プログラムだけでなく、ハードウェアも設計するようになり、事が思わぬ方向に進み出したのです。すると、今まで毎晩遅くまで仕事だった生活が、ほどなく銀座で飲めるようにもなりました。 その後も、次々と入る仕事に人手が追いつかず、ついには高校生の弟にも、学校から帰ったらスーツに着替えて、都内の打ち合せに行かせる状況になりました。しかも、数日で終わりそうな仕事に「なんとかお願いできませんか」と高額な見積を提示されると、もう「どうにもとまらない」という状況で突き進んでいったのです。

    絶滅危惧のマンクスロフタン

    <第2回「高校三年生」第4回「北の宿から」>